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宮島地域コミュニティからの日々の活動日記です。


by miyajima-c

「イノシシ等の鳥獣被害対策の勉強会」を開催しました

1月16日(月)午後1時30分から、宮島市民センター3階研修室において宮島地域コミュニティ推進協議会 生活・環境部会の事業として「イノシシ等の鳥獣被害対策の勉強会」を開催しました。

当協議会専門部会の一つ、生活・環境部会では「暮らしと自然の環境保全事業」の一環として、生活に密着したテーマを選んで有識者を招き、地域コミュニティの立場から「生活に役立つ知恵」を授けるための講演会を毎年実施しています。

今年度は、前年度も関心が高く、深刻な地域課題であるイノシシを筆頭とした島内の鳥獣被害対策をテーマとし、学習会を開催する運びとなりました。

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講師は、鳥獣被害対策アドバイザーとして現在、廿日市市へお招きしている井上雅央(まさてる)さん。
元近畿中国四国農業研究センター鳥獣害研究センター長を務められ、退職後、広島県をはじめとして複数の県で鳥獣被害対策を支援するスペシャリストとして活動しておられます。

講師の井上さんから、開口一番、
「鳥獣被害対策の基本的な考え方として大切なのは、同じ知識が地域でどれだけ広まるかです。」
「野生動物は、優しくしても恩義を感じることは、一切ありません。」

穏やかな口調ながらも、ある意味、衝撃的な言葉からお話は始まりました。

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「イノシシなど野生鳥獣は『暑がり』で『怖がり』で『怠け者』。エサ場があるこんもり茂った涼しい場所がないと生きていけない。駆除するというよりも、被害に遭わない対策を講じてほしい」

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実は今回の講習会開催前、講師の井上さんは生活被害の現状を確認し、住民の手でできる対策を検討するため、宮島島内を視察。

ほんの数時間でしたが、即座に宮島島内の現状を把握し、的確な知識を提供いただきました。

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第一に、イノシシなどの鳥獣被害が増えるのは、無自覚のうちに餌付けなど被害を増やすような状況が
集落内に放置されていたり、人馴れを助長しているからであること。

そのことを地域で学習し、やってはいけないことを地域で共有しなければならない。
地域で一人でも餌付けをする人がいたら、努力は全て水の泡となってしまう。

「イノシシでいえば、弱ったウリ坊(イノシシ)をみたら、初めて見た9割以上の人は「可愛い」と
感じ、エサをやってしまう。
 約1年半で大人へと成長し、人馴れしたイノシシは、次世代のウリ坊へ民家のそばがエサ場だと継承
し繁殖を繰り返します。
 また、畑にある生ゴミに近づいたイノシシを見ても、そばで見るだけで何もしないのは、知らず知らずのうちに餌付けしているのと同じこと。これが無自覚な行動による集落での餌付けの図式です。」

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第二に、イノシシが市街地にまで出没するということは、シカの過剰な増加と因果関係があるのではないか。

「イノシシとシカは同じものを食べます。シカが先にエサを食べた後にイノシシがエサを探し回るため、行動範囲が拡大したということも考えられます。」

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「また、閉ざされた環境下での近親交配を招き、遺伝子劣化したシカが発生している可能性や、宮島の場合、普通は生きられないのに、人に慣れたシカへの餌やりに伴い命を繋いだ結果、更にシカが増加するといった悪循環を生んでしまっている。」

「適正な生息数になるまで、シカのたまり場を見つけたら、地域住民により追い払いを行い、そこへ来ても安心して食べられないストレスを与えること。
そのことが妊娠率の低下につながり、鳥獣被害から守れる集落への環境改善となります。」

第三に、発情期にあるメスのイノシシは、数kmの範囲でオスのイノシシを呼び寄せてしまうので、集落に近寄せてはならない。

第四に、イノシシなどが近寄れない環境づくりに向け、エサ場やひそみ場所を無くすための雑草・木々の剪定が大切である。
特に「柿」はあらゆる動物の好物で、庭に植樹している収穫していない柿を放置していると、いつ行っても餌にありつける場所と学習し、「無自覚の餌付け」となってしまう。

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第五に、「捕れば 捕るほど イノシシ地獄(※1)」を格言とし、捕獲を対策と思っている人に引きずられず、「駆除する」対策の前に学習すること。駆除しない人がどれだけ学習するかが大事である。

(※1)「獲れば 獲るほど イノシシ地獄」
「『ウリ坊』だけ獲れたが『親』は逃げた」ということになると、その親はワナへの警戒心が強くなり、ワナにかからなくなってしまいます。
子を全て失った親は、20日程度で発情し、ワナにかからず子を産み続けるイノシシがうまれます。

講義の終盤には、プロジェクターによる動画で「柵で守る、追い払う」ための学習として、いわゆる「柵の設置失敗例」をイノシシが行動する様子を見ながら解説していただきました。

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大人のイノシシは20㎝のすき間を潜り抜ける習性や、鼻で70㎏を持ち上げる怪力であること、感電するのは体毛のない鼻だけなど、知らないことばかり。
正しい柵の設置するだけでも、生態を知る学習の必要性を改めて認識しました。

また、参加者からの質問では、生態を知るということで「イノシシはミミズを食べるのか(※2)」といった噂の真相についてや「隠れて近所の者が餌付けしているのをやめさせるにはどうすればよいか」といった深刻な声も挙がりました。

(※2)イノシシは昆虫や幼虫は好んで食べますが、ミミズは食べません。
イノシシが土を掘り返すのは、植物の根っこを食べるとき、お腹いっぱいになって遊んでいるときです。

宮島地域における鳥獣被害対策は、一緒くたに解決できないことであると同時に、自然や環境に配慮し「世界遺産の島」宮島を守っていく責務と向き合わなければなりません。

今回は、今季最強の寒波到来に伴う悪天候も影響し、参加者が15名と若干少ない状況となってしまいましたが、今後も正しい知識を地域全体で認識し、生活に直面する地域課題の解決に向けての高い志向が持てるよう、「できることから始めよう」の精神で啓発活動を推進していこうと思います。
by miyajima-c | 2017-01-23 13:30 | 生活環境部会